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移住者インタビュー 志賀 風夏さん

きれいが詰まったこの場所が大好き!
志賀 風夏さん
2023年4月、川内村に古民家カフェがオープンしたと話題に。店名は「秋風舎」。オーナーは川内村出身の志賀風夏さん。ご両親が移築した築200年の古民家を活用したいと、川内産の食材をふんだんに使った料理や、手作りのドリンクを提供するカフェにリノベーションしました。訪れてみると、木漏れ日の中を爽やかな風が通り抜け、まるで物語の中に足を踏み入れたような感覚になります。川内村にUターンし、古民家カフェを営むに至った志賀さんの思いをお届けします。

私にもできることがあるはず

村には高校が無いので、相馬市の祖母の家で暮らしながら高校に通い、県内の大学に進学。2017年2月に川内村に戻って来ました。大学に通っていた頃も、ちょくちょく村には帰って来てたんです。その頃は若い人が村からいなくなっちゃってて。おじいちゃんおばあちゃんたちが足腰痛めながらも頑張ってるというような状況でした。私が村に戻るだけで、本当に歓迎してくれて、ありがたがってくれて。私にもできることがあるんじゃないかと、大学を中退して川内にUターンしました。
元々、村のことは大好きだったんです。それに、この家をどうにかしなきゃとも思っていました。村に戻ってから「Cafe Amazon」や「天山文庫」など素敵な場所で働きましたが、徐々にチェーン店や行政が運営している場所だけでは補えない部分もあると感じるようになってきたんです。「もっとこういう場所があればいいのに」という思いが募って、じゃあこの家をカフェにして自分で運営しよう!と。

どんな人でも集える場所づくり

この場所をコワーキングスペースなどにしてもよかったんですけど、それだと来てくれる人が限られるなと思って。特定の人だけが集まる場所ではなく、みんなが気軽に集える場所にしたかったんです。
それにはどうすれば?と考えたときに、川内村の食材を使った食べ物を提供しようと思いつきました。そうすれば、村の外からも中からも人が集まってくれるんじゃないかなって。結果、カフェにして大正解でした。平日は村の人たちが来てくれて、土日は村外から訪れてくれる人が増えました。村人と村外から来る人、半々くらいというバランスです。


食べてくれる人の顔を農家さんに届けたい

川内村の農家さんは、半年〜1年以上かけて野菜を作っています。たくさんの時間と労力をかけて作ってくれた野菜を、できれば無駄にしたくないんですよね。だから、余ってしまって廃棄されている村の作物を買い取ったり、珍しいから試しに少量だけ作ってみたけど、どこにも卸せない食材を買い取ったりしています。私にできることは小さなことかもしれないけれど、少量から買い取れるのは個人店の強みだなと思います。
それから、野菜を作ってくれた農家さんたちに、食べてくれる人の笑顔や感想を届けたいという思いもあります。最近では、生産者の顔は消費者に見えるようになってきたけど、その逆はあまりないなと思って。「あの野菜がこんな料理になったよ」とか、「お客さんがおいしいって言ってたよ」とか伝えると、本当に喜んでくれるんですよ。だからこそ、“村人も来やすい”という環境づくりをすごく意識しています。自分が一生懸命作った野菜を、お客さんが食べている。そんな場面を農家さんが見ることができたら素敵だなぁ、と思って。

村の中と外のつなぎ役に

私の両親は村の外からきた移住者です。私は村で生まれ育っているので、ちょうど“合いの子”なんですよね。村人になりきれてもいないし、完全な移住者でもない。村の人は私を村の子としてかわいがってくれるけど、両親が苦労してる姿も見てきたから、村人の気持ちも、移住者の気持ちも、両方わかります。合いの子・雑種である私だからこそのポジションで、村の中と外のつなぎ役ができればいいなと思っています。
川内村は、自然が豊かで四季を色濃く感じられる、本当に良い場所です。田んぼの変化を毎日見てるだけでも「きれいだな」って思えるし、この原風景をずっと守っていきたい。村の美しさは日帰りじゃ味わいきれないから、ゲストハウスみたいなちょっと泊まれるところも作りたいなと思っているんです。朝の光がきれいだなとか、夕日がきれいだなとか、星がきれいだなとか。自然を見てきれいって思えるスイッチを押すことができれば、川内のことを好きになってもらえるんじゃないかな。

「文/遠藤 真耶」
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